この休日で『リクルート事件・江副浩正の真実
』中央公論新社を読んだ。
江副浩正、というと、明確に昭和の人である。彼の実業家としての人生は、東京オリンピック前夜の東京で、東京大学新聞の広告営業マンから始まる。色々な広告主を回っても広告が取れなかったのが、学生向けの就職の広告だけは面白いように取れた。『かもめが翔んだ日
』朝日新聞社でも吐露されているが、大学を出て会社に勤めることも決断できず、「アブノーマルな人間」として心理学科を2年留年した江副は、日本の高度経済成長とともに時代を駆け抜けた。
江副の悲劇は、日本社会の時流に乗って企業を成長させたのにも関わらず、リクルート、という会社が日本社会のスタンダードから外れていたことだろう。
社員も外部の人間も関係なく、協力し、能力を振り絞って仕事を行う。自主自立して、自己実現を行う、という社風は、「自ら機会を作り出し、機会によって自らを変えよ」という社是に繋がった。リクルートは間違いなく輝いているいい企業だった。日本の他の企業と違って。
江副浩正、というと、明確に昭和の人である。彼の実業家としての人生は、東京オリンピック前夜の東京で、東京大学新聞の広告営業マンから始まる。色々な広告主を回っても広告が取れなかったのが、学生向けの就職の広告だけは面白いように取れた。『かもめが翔んだ日
江副の悲劇は、日本社会の時流に乗って企業を成長させたのにも関わらず、リクルート、という会社が日本社会のスタンダードから外れていたことだろう。
社員も外部の人間も関係なく、協力し、能力を振り絞って仕事を行う。自主自立して、自己実現を行う、という社風は、「自ら機会を作り出し、機会によって自らを変えよ」という社是に繋がった。リクルートは間違いなく輝いているいい企業だった。日本の他の企業と違って。
業容拡大に伴い、全国各地に自社ビルを建設した。斜陽のアルミ産業、日本軽金属の本社ビルも買い取り、広告営業にはない不動産の持つ、大きな利益に気づいた辺りから、リクルートは間違い始める。。
江副浩正の過ちを3点に絞ると
間違いなく、江副とリクルートは嫉妬される対象だった。
読売新聞が、住宅情報のライバル誌を出しても営業努力で、単価を下げずに駆逐した。先述の日本軽金属本社ビルの買収もそうだ。江副たちは努力をしたのだろうが、それは嫉妬の対象になる。『かもめが翔んだ日
』朝日新聞社によると、朝日新聞の関連会社の社長達を前に講演したとき、それを明確に感じた、という。その後朝日新聞社からリクルート事件の件を執拗に追及されたことを考えると、江副には何か、心当たりになることがあったのだろうか。
そして江副の最大の過ちは事業志向の勘違いにあった。自社ビルの資産価値が広告営業の利益よりも遥かに利益を稼いでいる事に勘違いをし、「リクルートコスモス」を設立し、不動産開発に乗り出した。「不動産を持っておけば利益のダムになる」という発想は当時としては当たり前の事だったのだろう。
しかし、リクルートコスモスのマンションを買おうとした在日韓国人が、銀行の融資を受けられなかった事をきっかけに設立した、不動産ノンバンク「ファーストファイナンス」は明確にやりすぎだった。後のリクルート事件では政治家がリクルートコスモスの未公開株を買う資金をファーストファイナンスが融資していた事が、リクルートを致命的にした。バブル崩壊後、ファーストファイナンスは清算されることになる。
そして、江副の最大の失敗は、成功の後に来た名誉欲なのではないか。
リクルートが「虚業」と言われるのを江副はつとに嫌ったという。リクルートが大きくなるに連れ、政財官マスコミの人間とも交友が多くなったが、江副の性格もあってか、『正義の罠 リクルート事件と自民党 二十年目の真実
』田原 総一朗によると、いつも一人ぼっちであったという、江副が若すぎたというのもあるだろう。DDI設立の時にも、稲盛和夫に「僕も入れてくださいよ」と懇願し断られている。
その悔しさもあってか、江副とリクルートはNTTに傾斜。NTTより専用線を仕入れ、細分化して再販する事業などで親密になっていった。当時の政治課題であった日米貿易摩擦の解決のために、リクルートがNTT経由で、アメリカのクレイ社のスーパーコンピューターを買う事情が『リクルート事件・江副浩正の真実
』にも出てくる。
江副の虚栄心を満たすために江副は日本のエスタブリッシュとの交友を深めてゆく。特に政界に関しては、業績が好調な事もあり、政治献金も多かった。自著でも書いているが、安部晋太郎との交友は深かったようだ。そうした付き合いの一環として自社の未公開株のばら撒きがあった。
『リクルート事件・江副浩正の真実
』を読むに、結局これは国策捜査だったことがわかる。「政治的意図や世論の動向に沿って検察(おもに特捜検察)が『まず訴追ありき』で捜査を進める」ライブドアと同じ図式だ。政財官のメインストリームにいた人から見れば、きっとリクルートもライブドアも虚業なのだろう。江副が東大を2年留年、堀江が東大中退で、徒手空拳で事業を起こしたのも、両者に共通する。そしてどちらも国策捜査の臭いがする。
リクルート事件は、その当時の法制に鑑みて、何ら問題のない案件であった。親しい人、信頼できる人に公開前に株を持ってもらう。株は株なのだから、上がる時もあれば、下がるときもある。リスクは自己責任だ。
しかし、時代が悪かった。世の中は財テクブームに溺れ、企業は経費で飲み食いし、海外旅行に行き、ゴルフ場を造成した。一方で庶民は生涯年収でも持ち家が買えない。片道2時間半かけてマイホームから会社へ通うサラリーマンの姿は哀愁が漂ってきた。
政財官のエスタブリッシュメントだけが、甘い汁を吸う。しかも、甘い汁を撒くのは、虚業で儲けたリクルートだ。わかりやすい図式だ。
しかも政治家の場合は秘書名義にし、未公開株を買う資金は先述の通りリクルート系のノンバンクが出していた。上場直後に売れば確実に儲かる。どこかでガス抜きをしないと、社会が持たない。国策捜査の出番だ。
『リクルート事件・江副浩正の真実
』はそんな検察とのなまなましいやり取りが書かれている。リクルートコスモス株を受け取った人間は多岐に渡り、政財界のほとんどの人の経歴が汚れてしまった。組閣前日に、検察官が政治家の名前のリストを拘置所の江副に見せるシーンが生々しい。大臣候補者がリクルート事件で穢れていないかどうかを江副自身に検分させようという魂胆だ。しかし、それは司法と行政の癒着ではないか。
検察官は江副に「政治の混乱を終わらせたい」と、検察調書への署名を迫る。江副とスケープゴートの数人の政治家(藤波元官房長官等)を起訴して、幕引きを図りたい、という論理だ。リクルートの経営や、自身の体調、親しい政治家を陥れてしまう事などに葛藤する江副の姿がそこにある。
しかし、これは、堀江貴文や佐藤優、鈴木宗男の事件と、罪の内容はともかく、同じ構図だ。
つまり、20年たった今も、何も変わっていないということだ。
※江副浩正の事はまた別の機会で書きたい。
江副浩正の過ちを3点に絞ると
- 他人からの嫉妬に気づかなかった事
- 事業志向の勘違い
- 名誉欲
間違いなく、江副とリクルートは嫉妬される対象だった。
読売新聞が、住宅情報のライバル誌を出しても営業努力で、単価を下げずに駆逐した。先述の日本軽金属本社ビルの買収もそうだ。江副たちは努力をしたのだろうが、それは嫉妬の対象になる。『かもめが翔んだ日
そして江副の最大の過ちは事業志向の勘違いにあった。自社ビルの資産価値が広告営業の利益よりも遥かに利益を稼いでいる事に勘違いをし、「リクルートコスモス」を設立し、不動産開発に乗り出した。「不動産を持っておけば利益のダムになる」という発想は当時としては当たり前の事だったのだろう。
しかし、リクルートコスモスのマンションを買おうとした在日韓国人が、銀行の融資を受けられなかった事をきっかけに設立した、不動産ノンバンク「ファーストファイナンス」は明確にやりすぎだった。後のリクルート事件では政治家がリクルートコスモスの未公開株を買う資金をファーストファイナンスが融資していた事が、リクルートを致命的にした。バブル崩壊後、ファーストファイナンスは清算されることになる。
そして、江副の最大の失敗は、成功の後に来た名誉欲なのではないか。
リクルートが「虚業」と言われるのを江副はつとに嫌ったという。リクルートが大きくなるに連れ、政財官マスコミの人間とも交友が多くなったが、江副の性格もあってか、『正義の罠 リクルート事件と自民党 二十年目の真実
その悔しさもあってか、江副とリクルートはNTTに傾斜。NTTより専用線を仕入れ、細分化して再販する事業などで親密になっていった。当時の政治課題であった日米貿易摩擦の解決のために、リクルートがNTT経由で、アメリカのクレイ社のスーパーコンピューターを買う事情が『リクルート事件・江副浩正の真実
江副の虚栄心を満たすために江副は日本のエスタブリッシュとの交友を深めてゆく。特に政界に関しては、業績が好調な事もあり、政治献金も多かった。自著でも書いているが、安部晋太郎との交友は深かったようだ。そうした付き合いの一環として自社の未公開株のばら撒きがあった。
『リクルート事件・江副浩正の真実
リクルート事件は、その当時の法制に鑑みて、何ら問題のない案件であった。親しい人、信頼できる人に公開前に株を持ってもらう。株は株なのだから、上がる時もあれば、下がるときもある。リスクは自己責任だ。
しかし、時代が悪かった。世の中は財テクブームに溺れ、企業は経費で飲み食いし、海外旅行に行き、ゴルフ場を造成した。一方で庶民は生涯年収でも持ち家が買えない。片道2時間半かけてマイホームから会社へ通うサラリーマンの姿は哀愁が漂ってきた。
政財官のエスタブリッシュメントだけが、甘い汁を吸う。しかも、甘い汁を撒くのは、虚業で儲けたリクルートだ。わかりやすい図式だ。
しかも政治家の場合は秘書名義にし、未公開株を買う資金は先述の通りリクルート系のノンバンクが出していた。上場直後に売れば確実に儲かる。どこかでガス抜きをしないと、社会が持たない。国策捜査の出番だ。
『リクルート事件・江副浩正の真実
検察官は江副に「政治の混乱を終わらせたい」と、検察調書への署名を迫る。江副とスケープゴートの数人の政治家(藤波元官房長官等)を起訴して、幕引きを図りたい、という論理だ。リクルートの経営や、自身の体調、親しい政治家を陥れてしまう事などに葛藤する江副の姿がそこにある。
しかし、これは、堀江貴文や佐藤優、鈴木宗男の事件と、罪の内容はともかく、同じ構図だ。
つまり、20年たった今も、何も変わっていないということだ。
※江副浩正の事はまた別の機会で書きたい。


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